「箱根の坂」 司馬遼太郎 [Book]
『箱根の坂(上)(中)(下)』 講談社文庫、1984年。
上巻は、前半生がほとんど分からない早雲の京都時代を通して、室町時代、応仁の乱の話が続きます。
「すでに、のちの世で言うところの応仁の乱が進行している。
いつはじまり、いつ終わったかということもないこの大乱には、主役がない。
正義も名分もない。
意味もなかった。・・・」 (上巻)
室町時代後半~応仁の乱を描いたものは少ないので、この部分も面白かったです。
作者は、早雲を、権謀術数を駆使した下克上の先達としてではなく、禅僧のように質素で地味な性格として、淡々と描いています。
たとえば、以下のような独白をするくらいなので、この作品では、めずらしく女っ気は殆どありません。
「もともとは一介の書生か、風来坊で人生をすごすつもりであった。理由はない。ただ、妻子を持ち、夫とか父とかよばれる男どもを見て、心に染まず、転し(うたてし)と思い、ときに見苦しいとさえ思ってきた。」(中巻)
早雲が、駿河に下向して興国寺城の城主となったのは四十五歳、小田原城と西相模を得たのが六十四歳、八十七歳で相模全円を平定し、翌年に病没。
八十を過ぎてからも戦陣に立っていたことになるので、生年については諸説あるようですが、
世に出てから四十年以上働き、待ち、また働き、しかも終わりを全うしたという点は間違いないようで、これだけでも類をみない存在なのではないでしょうか。
乱世の奸雄というくくりではなく、もう少し歴史的にきちんと評価されていい人物なのかもしれません。
小説としては長いですが、引っかかることなく、すんなりと読める話です。室町、戦国時代に興味がある方や、静岡・神奈川に土地勘がある方は特に楽しめると思います。
上巻は、前半生がほとんど分からない早雲の京都時代を通して、室町時代、応仁の乱の話が続きます。
「すでに、のちの世で言うところの応仁の乱が進行している。
いつはじまり、いつ終わったかということもないこの大乱には、主役がない。
正義も名分もない。
意味もなかった。・・・」 (上巻)
室町時代後半~応仁の乱を描いたものは少ないので、この部分も面白かったです。
作者は、早雲を、権謀術数を駆使した下克上の先達としてではなく、禅僧のように質素で地味な性格として、淡々と描いています。
たとえば、以下のような独白をするくらいなので、この作品では、めずらしく女っ気は殆どありません。
「もともとは一介の書生か、風来坊で人生をすごすつもりであった。理由はない。ただ、妻子を持ち、夫とか父とかよばれる男どもを見て、心に染まず、転し(うたてし)と思い、ときに見苦しいとさえ思ってきた。」(中巻)
早雲が、駿河に下向して興国寺城の城主となったのは四十五歳、小田原城と西相模を得たのが六十四歳、八十七歳で相模全円を平定し、翌年に病没。
八十を過ぎてからも戦陣に立っていたことになるので、生年については諸説あるようですが、
世に出てから四十年以上働き、待ち、また働き、しかも終わりを全うしたという点は間違いないようで、これだけでも類をみない存在なのではないでしょうか。
乱世の奸雄というくくりではなく、もう少し歴史的にきちんと評価されていい人物なのかもしれません。
小説としては長いですが、引っかかることなく、すんなりと読める話です。室町、戦国時代に興味がある方や、静岡・神奈川に土地勘がある方は特に楽しめると思います。
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