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「こぞの冬」 木下杢太郎 [Shiika]

 

十一月の風の宵に
外套の襟を立てて
明石町の河岸を歩いたが
その時の船の唄がまだ忘れられぬ。
同じ冬は来たれども
また歌はひびけども
なぜかその夜が忘れられぬ。


 

今年も11月になって、肌寒さを感じるようになりました。

この詩を知ったのは、もう20年以上前になります。

「十一月の風の宵に・・・」と思い出すような、そんな夜が自分にもあったような気がして。この詩が醸し出す錯覚なのかもしれませんが。


木下杢太郎(きのしたもくたろう、明治18年8月1日 - 昭和20年10月15日)。詩人、医学者。静岡県伊東市生まれ。

 


「落葉松」 北原白秋 [Shiika]

大正10年、「水墨集」所収。軽井沢の星野温泉入口に文学碑があるそうです。
四行 x 八節のうち、少しだけ引用します。

 
 からまつの林を過ぎて、
 
 からまつをしみじみと見き。
 
 からまつはさびしかりけり。
 
 たびゆくはさびしかりけり。


なぜか、秋になるとこの一節を思い出すのです。

二節目はこんなふうに続きます。


 からまつの林を出でて、
 
 からまつの林に入りぬ。
 
 からまつの林に入りて、
 
 また細く道はつづけり。


そして、五節目の静かなアクセント。


 からまつの林を過ぎて、
 
 ゆゑしらず歩みひそめつ。
 
 からまつはさびしかりけり、
 
 からまつとささやきにけり。


朗々と吟じる詩もいいですが、こんなふうにそっと呟くような詩には、やっぱり秋が似合うような気がします。

原文は四行 x 八節、三十二行。ネットでも簡単に見つかります。

タグ:現代詩 詩人

「我が愛する詩人の伝記」 室生犀星 [Shiika]

室生犀星が同世代の詩人11人について書いた伝記。中公文庫。

北原白秋、高村光太郎、萩原朔太郎、釈超空、堀辰雄、立原道造、津村信夫、山村暮鳥、百田宗治、千家元麿、島崎藤村。

特に、高村光太郎を書いた部分は、何度も読み返しました。

生年と没年(享年)。
萩原 朔太郎 1886年(明治19年)11月 1日-1942年(昭和17年)5月11日(55)
北原 白秋 1885年(明治18年) 1月25日-1942年(昭和17年)11月2日(57)
立原 道造  1914年(大正3年) 7月30日-1939年(昭和14年)3月29日(24)
堀 辰雄  1904年(明治37年) 12月28日-1953年(昭和28年)5月28日(48)
高村 光太郎 1883年(明治16年) 3月13日-1956年(昭和31年) 4月2日(73)

室生 犀星 1889年(明治22年) 8月1日-1962年(昭和37年)3月26日(72)

あとがきから。
”中原中也、宮沢賢治、中川一政の詩にも私は惹かれていたが、その個人の生活が不分明であり起稿は不可能であった”

宮澤 賢治 1896年(明治29年)8月27日-1933年(昭和8年)9月21日(37)
中原 中也 1907年(明治40年)4月29日-1937年(昭和12年)10月22日(30)


現代詩の詩人たちを知る資料として重要なだけでなく、文章も内容も本当に素晴らしい作品集だと思うのですが、残念ながら現在は絶版になっているようです。
古本なら、アマゾンなどで入手可能です。興味がある方は、ぜひ読んでみてください。
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